届かない青空に手をのばして

自閉症スペクトラムの息子とシングルマザーの日々のこと

最初の保育園

最初に息子が通っていた保育園は

全員が同じ方向を向いていることを

良しとするような雰囲気でした。

 

当然のことながら息子は集団から

はみ出してしまいます。

 

周りと同じ行動ができないのは

息子にとって当たり前のことなのですが

当時の私はあまり実感がなく

先生から毎日注意され

気付かされる日々でした。

 

1歳の息子にも

保育園では自立を求められます。

 

一人で靴がはけない

一人でご飯が食べられない

一人で着替えられない

 

できないことばかり

先生から指摘されます。

 

ご飯を食べたいのに

スプーンとフォークが

一人では上手く使えず

お茶碗に顔を突っ込んでしまったと

先生から聞いた日もありました。

 

それでも先生は手伝ってくれないのかと

愕然としました。

そんな環境だと分かっていたなら。

もっと家で練習してから

入園すれば良かったと後悔しました。

 

家では何から何まで

私が手伝っていたのもいけなかったと

思います。

しかし、自分一人でやるように求めても

息子にはとても難しいことでした。

 

 

ある日、他のクラスの子のお休みの連絡を

電話で園長先生が受けていました。

電話を切った後に、園長先生が

「あの子、やっと休んだよー」と

喜んでるような声が聞こえました。

息子のクラスは事務室の隣で

話し声がよく聞こえます。

 

我が家も休んで欲しいと

思われているだろうな

毎日毎日、先生から注意をされるし

私が登園拒否になってしまいました。

 

仕事よりも保育園に行きたくない

けれど行かなければいけない

もうあの日々には戻りたくありません。

慣らし保育

無事に保育園へ入園して

慣らし保育が始まりました。

 

見学した時に、慣らし保育の期間は

一週間ほどだと聞いていましたが

一週間を過ぎても

息子が保育園に慣れる様子はなく

二時間しか預かってもらえませんでした。

 

他の子は、お昼御飯を食べて

お昼寝をして

おやつを食べて

段階的に保育園で過ごす時間が

長くなっていきます。

 

息子は、二週間過ぎても

まだ午前中二時間。

仕事復帰の日も近付いてきて

私も焦りました。

 

仕事が始まったら、お迎えは17時半頃。

このままでは困ると、先生にお願いして

お昼御飯を食べるまでは

預かってもらうようにしました。

仕事復帰の日まで

一週間もなかったと思います。

 

私と離れる時に泣き叫び

保育園でも馴染めない

息子の様子を見ていると

難しいのは分かるのですが

ずっと二時間保育だとは

思いませんでした。

 

保育園は始まっても

仕事はまだ始まらない

慣らし保育の期間は

私にとって初めての自分時間だと

思っていましたが

とんでもありません。

 

保育園に息子を預けに行って

私だけ帰宅して

すぐにまたお迎えに行く日々。

先生からは毎日のように

息子ができないことなどの指摘があり。

 

慣らし保育を楽しみにしていたのに

家で2人で過ごしていた時よりも

ずっと大変で辛い時間でした。

保育園選び

保育園は自宅から通いやすい所に

決めようと思っていましたが

自分の目で雰囲気を

確かめた方が良いと思い

第一希望予定の保育園に見学へ。


園庭も教室も広い。

建物も綺麗。

プールも畑もある。

保育士さん達も感じが良い。


何もかもが素晴らしく思えました。


ただ、父親の育児参加に

力を入れていると聞いて

引っ掛かりました。


ひとり親世帯でも大丈夫なのか心配になり

父親達の行事での活動内容を聞いて

無理かもしれないと思いました。


見学からの帰り道は

ずっと下を向いていたと思います。


息子にとって

何を優先すれば良いのか。

父親が行事に来てくれないのは

この先ずっと。


それなら

お友達のお父さん達に囲まれて

色々な人と触れ合うのも

良いかもしれない。


でも、幼い子に分かるだろうか。

寂しい思いをさせるだけではないだろうか。


色々と悩み

他の保育園も見学して

父親の行事参加にこだわっていない

別の保育園に入園しました。

 

その方が息子が傷付かないと

思ったからです。


シングルマザーだから

入りたい保育園を諦めるなんて

思いもしませんでした。

 

そして、悩みに悩んで決めた保育園から

転園することになるとは

この頃予想もしていませんでした。

加配の先生

加配の先生について

臨床心理士の先生に相談すると

息子にとってはとても良いことだと

喜んでくれました。

 

保育園側のやり方に

不信感を抱きつつも

息子にとって良い環境になるのならばと

私もしぶしぶ納得したつもりでした。

 

しかし、新年度になり

担任の先生が発表されても

息子の加配の先生らしき先生は

見当たりませんでした。

 

昨年度と同じ人数の先生が担任です。

息子に先生が付き添ってる様子もなく

今までと同じような環境での

保育園生活でした。

 

あんなに嫌な思いをしてまで

申請書を記載したのに

加配の先生はつかなかったのだろうか。

保育園から報告があっても良いのに。

 

いくら待っても

保育園側からは説明がないので

自分で確認することにしました。

 

すると、先生0.5人分の加配が

つきましたとのこと。

新しい先生を雇用したのではなく

今までいる先生を加配分として

処理したようです。

 

保育園にいいように利用された

気持ちになりましたが

これが現実なのだと思いました。

 

保育園側から療育センターの話を

聞きたいと言われることもなくなり

面談をすることもなくなり

もう我が家には用はないのだと感じました。

 

保育園への気持ちが

どんどん冷めていきましたが

最初の保育園はもっと環境が悪く

2ヵ所目の保育園だったので

耐えることができたのだと思います。

 

結局、息子の加配の先生という

特定の先生はいないまま

卒園まで過ごしました。

保育園側の事情

息子担当の補助の先生をつけたいと

保育園から申し出があり

申請書の記入をする流れになりました。

補助の先生は

加配の先生と言うそうです。

 

「とにかく悪く書いてください。」と

言われ、驚きを隠せませんでした。

我が子のことを悪く書きたいなんて

とても思えません。

 

私が難色を示していると

発達障害だと言われた時のように

先生3人が次々とたたみかけます。

 

お母さんが思っている様子と

保育園での様子は違う。

息子のために保育園の先生が

1人取られてしまい困っている。

悪い状態として申請しなければ

加配の先生を雇用するための

補助金はなかなかもらえない。

すぐに申請して、来年度の4月から

先生を雇用できるように

間に合わせないといけない。

 

保育園側の事情を話され

聞きたくなかった

知りたくなかったと思いました。

息子が発達障害でなければ

こんな保育園の裏事情を知ることもなく

息子が楽しい気持ちで過ごせるよう

保育園の先生と協力できたかもしれない。

 

息子のことを悪く書くなんて

私が思っていることと違うことを書くなんて

嘘はつきたくない。

でも、息子が一日のうち長い時間を

過ごすのは保育園なので

環境は良くしたい。

 

葛藤しながら抵抗もしましたが

先生3人に囲まれ、私は1人

反論しても、さらなる反論で

主張はかき消され

情けないことに

ほとんど負けてしまっていたと思います。

 

この日から、保育園側とは

決定的に壁ができてしまいました。

息子のためだと信じていたことが

保育園側の事情によるものだった。

この複雑な気持ちと心の傷は

卒園した今でも

きっとこの先も

ずっと消えることはないと思います。

保育園への報告

療育センターでのやり取りについては

その都度、保育園に報告をしていました。

 

私よりも、保育園側から

どんどん話をしたい様子でした。

特に診察を受ける前は

5か月待ちだと説明はしても

まだかまだかと

保育園からだいぶ聞かれていました。

 

そうは言われても

診察までは待つことしかできず。

どうしてこんなに話を進めたがるのか

もちろん息子のためだとはしても

違和感を覚えつつ。

 

待ちに待った診察が終わり

保育園への結果報告の面談時に

なぜこんなに急かされていたのか

謎は解けました。

 

私は堂々と

発達障害ではありませんでしたと

報告しました。

ただ、こだわりが強い

凸凹タイプですと。

 

コソコソ小声で話す先生達。

発達障害だと診断されたと

私が報告するのを

待っていたのかもしれません。

私が受け入れていないだけで

診断されたと判断されたのかもしれません。

 

一枚の紙が出されました。

補助金を申請して

息子担当の補助の先生をつけたいので

その申請書を記入してくださいと。

 

全てはこのためだったのだと

保育園側の態度の違和感が

つながったようでした。

療育センターへの感謝

あの日、保育園と面談するまで

息子が発達障害だと指摘されるまで

療育センターという名前さえも

知らずにいました。

 

療育センターでは

様々な職種の方が働いていて

様々なプログラムが用意されていて

こんなにも手厚く支援を受けられるのかと

感激した覚えがあります。

 

逆に言えば

息子は支援を受けなければならない立場。

黒い気持ちが

モクモクとわき上がってくる時も

ありました。

 

保育園の対応には距離を感じる。

保育園の他のお母さんや友人達は

私の息子に対する困り事について

うちの子も同じと言うけれど

同じではない。

相談できる旦那さんもいない。

 

孤立していて

心細かった私にとって

専門家の意見が聞けて

息子の特性も理解してもらえる

療育センターという場所は

ほっとできる存在でした。

 

療育センターの皆様には

本当に感謝しています。

 

そんな頼りにしきっていた

療育センターですが

息子が小学生になってからは

一度も行っていません。

 

でも、困ったことがあったら

いつでもまた連絡できる

そう思える場所があるだけで

大きな心の支えとなっています。